防災研修システム開発室
当研究室では復興や防災・減災をテーマに、災害への備えや発生時の応急、復興のプロセスを切り口にして、社会と自然の最適な関わり方や災害とどう向き合えば被害を最小限に抑えられるのかについて継続的な関心を持って教育・研究を進めています。最終的には、学校現場や社会において幅広い側面から防災・減災に貢献できる人材の育成システムの確立を目指し、大きくわけて3つの課題に取り組んでいます。
1. 学校防災の可能性の模索
東日本大震災では、学校施設が避難所としての機能を果たし、多くの人々を救い、復旧の拠点としても貢献しました。一方、石巻市立大川小学校では、学校の管理下で多数の児童や教職員が犠牲となる惨事も起きました。こうした教訓から、被災地では学校の安全管理体制や児童の安全に関する教育啓発が積極的に行われています。この現状を踏まえて、当研究室は学校現場で実際に行われている取組から、学校という存在がどのように社会の防災文化の醸成と地域の安全に貢献できるのか、そして災害に関する知識や経験をどうやって子どもたちに受け継いでいくかを見出していく研究と教育実践を行なっています。
2. 災害記憶・教訓の伝承を通じた防災人材の育成とグローバル協力
災害の記憶は、その経験や年齢の差によって次第に薄れていきます。多大な犠牲を出した自然災害が遠い昔の出来事として扱われてしまえば、同様の被害を繰り返すばかりです。そこで整備が進んでいる‘震災遺構’などの災害伝承施設や資料の活用や、先人たちの知恵の再発掘、防災啓発をしている語り部さんや教員たちとも交流しながら児童・生徒や一般市民への効果的な防災啓発の方法や効果を究明していきます。また、ここ仙台は第3回防災世界会議において「仙台防災枠組2015-2030」が採択された地でもあり、当研究室では災害に脆弱な途上国の防災に関わる人材の育成の一環として海外行政官研修などを受け入れ、東日本大震災から得られた教訓の伝承と防災啓発を通じた国際協力を実践しています。
3. 持続可能でインクルーシブな防災都市づくりの研究
私の専門は地理学で、海外都市の地域を研究してきました。ミクロに都市空間を分析すると社会経済的な格差があり、自然災害はそうした社会の脆く弱い部分に被害をもたらすことで社会の問題を露わにするといわれています。ハード面での整備が不十分な途上国の大都市でも、教育啓発のようなソフト面の対策を通じて災害リスクを軽減できます。だからこそ都市社会の課題を明らかにし、多様な防災の担い手を災害予防の取組に包摂していくインクルーシブな防災都市づくりを実現するために海外の災害多発都市との比較研究を展開しています。
学校防災においては、教師が自らの教科/専門での知識・技能をどう活かせるかを意識的に検討しつつ、地域や学校の実情に応じた組織活動を展開する必要があります。それは学校以外の現場でも同様に、社会の一人一人の心がけ、備え、取組の積み重ねによって達成されるものです。当研究室ではそうした防災の活動の一端として、開かれた研究室運営を心がけています。関心がある学生、そして地域の方々の訪問や参画を歓迎します。